小麦アレルギーを持っていると、小麦を含む食べ物を体が受け付けなくなることをご存知でしょうか。小麦アレルギーだと判明した場合、安心して生活を送るためには、小麦製品を摂らない食事に関する具体的な知識が必要です。まずは、小麦アレルギーとグルテンフリーについての基本を理解しましょう。

1:小麦アレルギーとグルテンフリーの基本理解

小麦アレルギーは、体が小麦に含まれるたんぱく質に過敏に反応し、アレルギー症状を引き起こす状態を指します。また、グルテンフリーとは、小麦などのグルテンを含む穀物を摂らない食事法を指す言葉です。

小麦アレルギーとグルテンフリーについて、以下で詳しく解説していきます。

  • 1-1: 小麦アレルギーとは何か
  • 1-2: グルテンフリーとは何か

1-1:小麦アレルギーとは何か

小麦アレルギーとは、小麦を含む食品を摂取した際に、体が過敏に反応してしまう状態を指します。体内に入った小麦を、体は「異物」と誤認し、排除しようとして免疫反応が起きるのです。

小麦アレルギーを持っていると、パンやうどん、ラーメン、お菓子などの身近な食品が原因となり、以下のような症状が現れます。

  • 食べ物が触れる箇所がかゆくなる
  • 顔や舌が腫れあがる
  • くしゃみや鼻水、鼻づまりが続く
  • 下痢や便秘になる
  • 肌にかゆみや湿疹が現れる
  • 頭痛やめまい、ふらつきを感じる

これらの症状が見られた場合はアレルギーが疑われるため、医療機関で検査を受けましょう。重症化すると、複数のアレルギー症状が重なる「アナフィラキシーショック」が起こるおそれがあります。軽い症状であっても無視せず、すぐに対応してください。

アレルギーが疑われる場合、小麦を含む製品の摂取を避けるように指示される場合があります。小麦はパンやパスタだけでなく、ソーセージやつくね、調味料など、あらゆる食品に含まれています。安全な食生活のために、小麦やグルテンが含まれる食品について正しく理解する必要があるでしょう。

より詳しい情報は「小麦アレルギーとは」の記事で解説しています。こちらもご覧いただき、理解を深めてください。

1-2:グルテンフリーとは何か

多くの方が「グルテンフリー」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。グルテンフリーとは文字通り、グルテン(小麦たんぱく)を含まないことを指します。もともとは小麦アレルギーやセリアック病(小腸でグルテンを異物と誤認し、それに反応して体調を崩す自己免疫疾患)の患者が、体調を管理するために取り組む食事法でした。しかし、近年では健康志向の高まりに伴い、一般の人々からも注目を浴びています。

グルテンフリー食品は、小麦などのグルテンを含む穀物を使用しません。代わりに米、とうもろこし、キヌア、アマランサスなどの穀物、いも類、豆類を利用します。さらにグルテンフリーの生活では、小麦製品だけではなく、小麦を含む調味料、さらには化粧品に至るまで意識しなければなりません。

小麦アレルギーの方にとって、グルテンフリーは生活の一部であり、必要不可欠なものです。それに対して、健康志向の人々がグルテンフリーを選ぶ理由は、体調管理やダイエット腸内環境の改善など多岐にわたります。

グルテンフリーとは、食生活の見直し、食品に含まれる成分の理解、体調との関連性の理解など、食をとおして自分自身の体と向き合う機会でもあります。体と向き合うことが、体調管理や健康維持につながるのです。

何かしらの体調不良が続き、その原因がグルテンにあるのかもしれないと思う方は、グルテンフリーの生活を一度試してみるのもよいかもしれません。それが頭痛や腹痛の改善、肌の状態の向上、体力の増大などにつながることもあります。

グルテンフリーの生活を始めるにあたっては、必要な栄養素の摂取、栄養バランスのよい食事についての理解が必要です。さらに、食品の調理法や保存法、レシピなどを知っておくとよいでしょう。具体的な方法や詳細についてはこちらの記事を参照してください。

2:小麦アレルギーの人が食べれないもの

小麦アレルギーの方が食べられないものについて、以下のポイントに従って具体的に解説していきます。

  • 2-1:小麦(グルテン)を含む主な食品
  • 2-2:意外と知られていない小麦(グルテン)を含む食品
  • 2-3:小麦粉を使用した生産ラインで作られている食品には注意

2-1:小麦(グルテン)を含む主な食品

グルテンは、小麦などの穀物に含まれるたんぱく質で、食品に弾力やモチモチとした食感を与えます。数多くの身近な食品に含まれているため、きちんと把握しておきましょう。

もっとも一般的な小麦(グルテン)を含む食品は、パン類です。食パン、バゲット、クロワッサン、マフィンなどのパン類全般が該当します。また、これらのパン類を使用したサンドイッチやホットドッグももちろん、小麦(グルテン)を含む食品と認識されます。

パスタ類も小麦(グルテン)を多く含む食品です。スパゲッティ、マカロニ、フェットチーネなど、一般的なパスタは主に小麦粉から作られています。パスタ以外の麺類も小麦(グルテン)を含むため要注意です。ラーメン、うどん、そうめんなどは小麦粉を主成分としています。

ケーキやクッキーなどのスイーツや、クラッカーやビスケットなどの軽食も、小麦(グルテン)を含んでいます。おいしくて手軽に食べられるピザやハンバーガーなどのファストフードも、小麦(グルテン)がたっぷり含まれている食品です。

2-2:意外と知られていない小麦(グルテン)を含む食品

小麦を避けるためには、パンやパスタなど目に見えて明らかな小麦製品だけでなく、意外な食品にも小麦が含まれていることも覚えておきましょう。

加工食品
市販されている多くの加工食品に、小麦が隠れています。とくに注意が必要な加工食品は、以下のとおりです。

  • ソーセージやハム:小麦たんぱくが結合剤として使われることがあります。
  • レトルト食品:スープやソース類のとろみ付けに小麦粉が使われていることがあります。

調味料
調味料も小麦を含む食品のひとつです。ここでは、とくに注意が必要な調味料を紹介します。

  • 醤油:原料に小麦が使われるため、必ずラベルをチェックしましょう。
  • ソース:とろみを付けるために、小麦を含む添加物が使われることがあります。

素材としての小麦
ここでは、パンやパスタなどとは違う使われ方をしている小麦製品を紹介します。

  • せんべい:うるち米だけではなく、小麦が使用されることもあります。
  • ムニエルやフリット:食材を小麦粉で覆って調理します。

2-3:小麦粉を使用した生産ラインで作られている食品には注意

食品の原材料には小麦やグルテンの記載がなくても、製造過程で混入する可能性があることに注意が必要です。多くの食品メーカーは、効率化のために同一ラインで複数の製品を製造しています。そのため、原材料に小麦を含まない製品であっても、同じラインで小麦を含む製品を製造していれば、生産設備や包装資材に残った微量のグルテンが製品に混入するおそれがあります。小麦に敏感な方や小麦アレルギーの方は、このような食品にも注意しましょう。

食品のラベルを読むうえで確認すべきポイントを紹介します。

  • 成分表示:成分一覧に”小麦”と表示されていないか確認しましょう。
  • 製造ラインについての注意表示:ラベルに「本製品は、小麦を含む製品と共通の設備で製造しています」という表示があれば、その製品は避けましょう
  • アレルギー表示:食品のラベルには、その製品に含まれているアレルギー物質(特定原材料)を表示する義務があります。

3:小麦アレルギーの人が食べれるもの

小麦アレルギーを持っていると「食べるものが制限されてしまう」と不安を覚えるのではないでしょうか。しかし小麦アレルギーの方でも、さまざまな食べ物を楽しめます。ここでは、小麦アレルギーの方が食べられるものについて詳しく見ていきましょう。

  • 3-1: グルテンフリーの主食
  • 3-2: グルテンフリーのスナックとデザート

3-1:グルテンフリーの主食

小麦アレルギーの方が日々直面する問題が、主食の選び方です。しかし、小麦を使用していない、グルテンフリーの主食はいくつも存在します。ここでは、それらの中から数種類を取り上げます。


  1. 日本人にとってなじみ深い米は、グルテンを含まない食品として知られています。そのまま炊いて、ご飯やおにぎりの形で食べられることがほとんどです。米から作られる米粉は、パンやお菓子作りに使えます。
  2. ソルガム
    アフリカやアジアで主に栽培されているソルガムは、栄養価が高いことで注目を浴びているグルテンフリー食材です。ソルガムは米やトウモロコシ以上の栄養価があり、とくに食物繊維がとても豊富です。ソルガムの粉はパンやお菓子の材料に使用されるほか、粒のまま炊飯して食べることもあります。
  3. キヌア
    アンデス地方を原産とするキヌアは、体に必要な必須アミノ酸をバランスよく含み、食物繊維やミネラルも豊富な「スーパーフード」として有名です。雑穀米のように米と一緒に炊いたり、スープやサラダの具材に加えたりして食べられます。
  4. オートミール
    アメリカの家庭で主食として親しまれているオートミールも、グルテンフリー食材として人気があります。食物繊維が豊富で腹持ちがよいこと、カルシウムや鉄が豊富で糖質が少ないことから、ダイエットに取り入れたい食材でもあります。

3-2:グルテンフリーのスナックとデザート

小腹が空いたときに食べたいスナックや、食後の楽しみであるデザートは、多くが小麦を使用しています。しかし、小麦アレルギーの方でも楽しめるスナックやデザートは意外にもたくさんあります。ここからは、グルテンフリーのスナックやデザートについて詳しく見ていきましょう。

スナックといえば、いつでも手軽に楽しめて、気分をリフレッシュさせたり小腹を満たしたりするのに最適な食べ物です。近年は、小麦の代わりに米を使用したグルテンフリーのスナックが増えてきています。

また、ナッツ類やドライフルーツも、小麦とは無縁のスナックとして楽しめます。ナッツ類ではアーモンドやくるみ、カシューナッツ、ドライフルーツではマンゴーやイチジクなどが人気です。

グルテンフリーのデザートには、米粉を使用したケーキやフルーツゼリー、シャーベットなどがあります。甘さもほどよく、食べごたえもあり、小麦アレルギーの方でも満足できるデザートタイムを過ごせるでしょう。

4:こんな食材は大丈夫?間違えやすい食材や加工食品とは

小麦アレルギーの方々は買い物や食事の際に、小麦が含まれているかどうかを常にチェックしなければなりません。ここからは、とくに小麦の有無の確認が必要な食品について解説します。

  • 4-1: うどん
  • 4-2: 調味料

4-1:うどん

うどんは人気のある食べ物ですが、主原料が「小麦粉」であるため、小麦アレルギーの方は食べられません。ここでは、小麦アレルギーの方でも食べられるうどんについて詳しく解説します。

小麦アレルギーの方でも安心して食べられる、小麦粉を使用していないグルテンフリー対応のうどんが市販されています。グルテンフリーのうどんに使われているのは、グルテンを含まない米粉です。うどんならではの弾力のある食感は保たれているので、うどんを食べたい小麦アレルギーの方にはうれしい選択肢になります。ただし、グルテンフリーのうどんを選ぶときは、次のことに注意しましょう。

  1. パッケージの表示をしっかり読む
  2. 店舗での提供にも注意する

4-2:調味料

醤油やウスターソースなどの調味料には小麦が使用されているものがあるため、小麦アレルギーの方は細心の注意が必要です。

醤油は、特に気をつけるべき調味料のひとつです。醤油の主な原材料は小麦や大豆、塩、麹であるため、小麦アレルギーの方は避けるべきとされています。しかし豆を使用した醤油など、グルテンフリーに対応した商品もあるため、原材料表示をよく読んで選んでください。

ウスターソースも、小麦を含む調味料のひとつです。こちらも小麦を使用していない商品が市販されているため、小麦アレルギーの方はグルテンフリーのウスターソースを利用しましょう。

調味料を選ぶ際には、原材料表示の確認が欠かせません。原材料に小麦が含まれている場合は、その旨が特定原材料として明記されているため、よく確認しましょう。

また、すでに調理されている食材や、特定の調味料を使って味付けされている食材は、小麦が含まれている可能性があるため注意してください。

5:小麦アレルギーの人は化粧品にも要注意

食品だけではなく、化粧品にも小麦などのグルテンが使用されています。ここでは、小麦アレルギーを持つ方の化粧品の選び方と、気を付けるべき点について詳しく紹介します。

化粧品には、小麦から抽出物された物質が保湿成分として使われていることがあります。とくに化粧水、乳液、クリームなどの基礎化粧品に注意が必要です。

小麦アレルギーは、小麦を食べると引き起こされると考えがちですが、化粧品などで皮膚から吸収されて症状が現れることもあります。

そのため、小麦アレルギーの方は化粧品も慎重に選びましょう。ただし、成分名が専門的な名称で表示されているケースが多く、化粧品の成分表示を理解するのは簡単ではありません。
ここで、小麦由来成分の一部を紹介します。

  • トリチウムブルガレ
  • ヒドロキシプロピル

上記の成分が記載されていたら、小麦由来の可能性が高いため、避けるようにしましょう。

さらに、化粧品を実際に使用する前に、必ずパッチテストをおこなってください。小麦アレルギーの方は食事制限だけでなく、化粧品選びも大きな課題となります。適切に選択する方法を身につけて、安全な商品を選びましょう。

6:小麦アレルギーの人のための食事例

小麦を含む食材を避けながら、栄養バランスのよい食事を作るのは難しく感じるかもしれません。しかし、知識と少しの工夫があれば、おいしく安全な食事を実現できるでしょう。

グルテンフリー食材である米を含む一般的な日本食は、ほぼそのまま楽しめます。ただし、醤油や味噌などの調味料には注意してください。

ほかにも、コーン(トウモロコシ)、キヌア、アマランサス、タピオカ、ソルガムなどの多種多様な穀物を食事に取り入れると、栄養バランスを保ちつつ飽きずに食事を楽しめるでしょう。

ここからは、具体的な食事例を紹介します。朝食はご飯に味噌汁、焼き魚、納豆などの和食を。昼食はおにぎりやお弁当、具だくさんのサラダに、手作りのドレッシングを掛けて。夕食には、キヌアやコーンをベースにした料理や、グルテンフリーパスタを試してみてはいかがでしょうか。

いずれにせよ、小麦アレルギーの方でも栄養バランスを保ちながら、安心して食事を楽しむことは十分可能です。

グルテンフリーの食事例については「グルテンフリーの食事例|おすすめ食材やレシピ、何を食べればいいのかを徹底解説」で解説しています。あわせて読んでみてください。

まとめ

「小麦アレルギー」とは、小麦に含まれる特定の成分が体にとって有害と判断され、アレルギー反応が生じる状態のことを指します。また「グルテンフリー」とは、グルテン(小麦をはじめとした一部の穀類に含まれるたんぱく質)を含まない食事法を表しています。

小麦アレルギーの方は、一般的なパンやケーキ、クッキー、パスタなどが食べられません。また醤油やソースなどの調味料、化粧品にも注意が必要です。小麦を含む製品と生産ラインを共有している食品にも気をつけましょう。

小麦アレルギーの方が安心して食べられるものとして、米やキヌア、オートミールなどを紹介しました。間違いやすい食材や加工食品については、うどんと調味料を取り上げました。

小麦アレルギーは、さまざまな対応が必要であることがお分かりいただけたでしょうか。代替食品を活用すれば、小麦アレルギーであっても健康管理に必要な栄養をしっかり摂りつつ、バラエティに富んだ食生活を送れます。自分の体質やライフスタイルにあった食事を見つけていきましょう。