健康診断の結果でγ-gtpの数値が高いといわれたことはありませんか。本記事ではγ-gtpの数値が高い人向けに、γ-gtpとは何か・数値を減らすために何をすればいいのかについて分かりやすく解説しています。
γ-gtpが気になる人は是非ご覧ください。
目次
γ-gtpとは
γ-gtp(ガンマ・グルタミルトランスペプチターゼ)とは、タンパク質を分解する酵素の一つであり、肝臓の解毒作用に関与します。健康診断の中でも検査項目として取り入れられているため、ご存じの人も多いのではないでしょうか。
γ-gtpはお酒を多量に飲んだ際に上昇する数値としても知られていますが、お酒を全く飲まない人でもγ-gtpは上昇することがあります。また、お酒に強い人でも多量に飲めばγ-gtpの数値は上昇するため、お酒の体質とγ-gtpの数値に相関関係はないとされています。
γ-gtpの基準値と異常値
γ-gtpの基準値は男性50IU/L以下、女性30IU/L以下とされています。数値が100を超えてくると脂肪肝や肝臓の障害が進んでいると推測されます。また200を超えると胆石や胆道がんの懸念も出てきます。
ただし、数値には個人差があり、必ずしもγ-gtpの数値が200以上だからといって胆道がんに罹患しているとは限りません。数値が高い場合でも自己判断せずに、まずは医師に相談しましょう。
γ-gtpが異常値を示す原因
アルコール性肝障害
長期に渡ってアルコールを多量に摂取することにより、肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんなどに罹患している状態のことをアルコール性肝障害といいます。
お酒を飲むと、アルコールが分解される過程で中性脂肪が作られます。中性脂肪は通常であれば血液によって全身に運ばれますが、多量のアルコールを摂取し続けることで肝臓に蓄積されていき、肝臓の細胞に炎症が起きたり細胞が破壊されたりします。
中性脂肪は、人間が飢餓状態になったときにエネルギーを溜め込んだり、体温を一定に保ったりなどと本来、人体にとって必要不可欠なものです。肝細胞が破壊されると、γ-gtpが血液内に放出されます。健康診断でγ-gtpの数値が高くなるのはこれが要因の一つです。
また、お酒に弱い人(アセトアルデヒド分解酵素の働きが低い人)は強い人に比べて脂肪肝の発症リスクが高いことが近年の研究でも明らかになっています。さらに、アルコール性肝障害に罹患している場合、γ-gtpのほかにASTやALTも上昇していることが少なくありません。
ASTやALTは肝臓に何かしらの障害が起こっている際に上昇する数値であり、これらが高くなくγ-gtpだけが高い数値を示している場合は別の病気の可能性もあります。その際は医師にご相談ください。
薬物性肝障害
薬物が肝臓にダメージを与え、その結果肝臓に様々な症状が引き起こされることを、薬物性肝障害といいます。薬物性肝障害は「中毒性」と「特異体質性」に大別されます。
- 中毒性:薬そのものや、薬が代謝されてできた物質により肝臓が炎症を起こしている状態です。原因物質である薬の量が多いほど症状が強くなります。
- 特異体質性:薬の量に関係なく、アレルギーのように発症している状態です。薬物性肝障害の多くが特異体質性といわれています。
薬物性肝障害自体はどのような薬でも起こるものですが、γ-gtpが高くなりやすい薬の例として、抗てんかん薬・向精神薬・睡眠薬・ステロイドホルモンなどが知られています。原因物質であるこれら薬の接種を止めることで症状が治まるケースが少なくありません。
なお、薬物性肝障害は肝臓の異常ではないため、γ-gtpの数値は上昇しますがALTやASTの数値は上昇しません。健康診断ではγ-gtpだけでなく、ALTやASTの数値も確認できることが多いですが、診断結果からアルコール性肝障害や薬物性肝障害もしくは別の障害なのかを推測することができます。
ただし診断結果だけでは分からないことも少なくないため、自己判断せずに医師に相談しましょう。
非アルコール性肝障害
お酒を飲んでいなくても、肥満や急激な体重増加によってγ-gtpの上昇が引き起こされることもあります。特に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は飲酒していない・飲酒していても一日20g未満であるにもかかわらず、脂肪肝に罹患している状態を指します。
この最大の原因は肥満とされており、先述したとおり処理しきれないほど増加した中性脂肪が肝臓に付着してしまい、肝細胞が破壊されることでγ-gtpの数値が上昇するようです。これにより本来は赤いはずの肝臓がピンク色に変化していきます。
本来肝臓は再生能力が高い臓器なので、破壊された肝細胞も安静にしていれば再生します。しかし、破壊と再生を繰り返していればだんだん機能は弱まっていくものです。さらに状況が進んでしまうと肝細胞は再生しなくなり、肝細胞が繊維化していきます。
これが肝硬変であり、肝がんに変化することもあります。
胆道炎・総胆管結石
胆石の発生や胆管に腫瘍がある場合もγ-gtpが上昇しやすいといわれています。γ-gtpは胆管(肝臓と十二指腸をつないでいる胆汁が通る管)の細胞にも存在しており、γ-gtpの数値が高いことは胆管に異常が発生している可能性も示唆します。胆道炎は胆道を感染部位とする感染症です。
何らかの異常によって胆汁の流れが阻害され、細菌感染が起こり発症します。胆嚢炎と胆管炎が代表的な病気です。放置すると敗血症やDICなどの病気を併発させる恐れもあるため注意が必要です。
γ-gtpを正常にする方法
良質なEPA・DHA・ビタミン・ミネラルの摂取
肝臓のダメージを回復する効果が期待できる栄養素として、EPAやDHAがあります。これらは体内で合成できず、食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸に含まれており、中性脂肪を減少させる役割が期待できます。
DHAは人間の脳や目の網膜などの神経系の脂質成分であり、脳に直接入って栄養素として機能します。EPAは血液をサラサラにしたり血栓をできにくくさせる効果があります。
EPAとDHAが豊富に含まれている食材
厚生労働省の摂取基準では、EPAとDHAを含めたn-3系脂肪酸を1日あたり男性で2.0〜2.2g程度、女性で1.6〜2.0g程度摂ることが推奨されています。
焼き魚にすると油と共に栄養成分が溶け出す恐れがあるため、おすすめはお刺身などの生食です。小さいお子さんがいるなど生食が難しい場合は、汁ごと食べられる煮魚やホイル焼きもおすすめです。また煮汁を使ってタレにできる場合は、照り焼きでもいいでしょう。
そのほか、手軽に食べられるものとして缶詰もおすすめです。
魚を生で食べる場合は、アニサキス症に注意
アニサキス幼虫はさば・いわし・さけ・いかなど魚介類に広く寄生しており、寄生している魚介類が死亡すると内臓から筋肉へ移動することが知られています。
タンパク質・ビタミン・ミネラルが豊富な食材
- タンパク質(鶏ささみなど肉や魚・しらすぼし・卵・大豆)
- ビタミン
- A:うなぎ・レバー
- B1:豚肉・玄米・ピーナッツ・ごま
- B12:卵・チーズ・かき・レバー
- C:ブロッコリー・いちご
- E:ごま・うなぎ
- ミネラル(えび・いか・きな粉・納豆)
傷ついた肝臓はタンパク質によって修復します。肝臓にはタンパク質をアミノ酸に分解する役割があり、取り込んだアミノ酸を体の中で必要なたんぱく質に作り替えます。
また肝臓にはビタミンを貯蔵する機能もあります。肝臓に負荷がかかっているときは貯蔵機能が失われるため、ビタミンを補給しましょう。
腹八分目にする
食べ過ぎは脂肪肝の原因となりますが、腹八分目に抑えることで脂肪肝を改善させ、肝硬変や肝がんを予防することができます。日頃から食べ過ぎないよう注意しましょう。
アルコールの摂取量を適量に
アルコールの摂取量を減らすことも大切です。γ-gtpの数値が100以下であれば、禁酒や節酒することで数値が正常値に戻ることも考えられます。これは、γ-gtpがアルコールに短期的に反応するためです。
このことから、一日のアルコール摂取量は20g以下にしましょう。これはビールなら500㎖、日本酒なら180㎖程度とされています。さらに、週に二日は休肝日を作ってお酒を飲まない日を設定することも大切です。
コレステロールの摂取量を減らす
コレステロールの中でも悪玉であるLDLコレステロールは動脈硬化を促進させ、胆石の原因になります。また脂質異常症などによる肝臓病の原因にもなりますので、脂質を摂取する際は注意しましょう。
適度な運動で適正体重をキープ
肥満も肝臓に影響を与えます。脂肪肝や糖尿病などのリスクが高まるため、定期的に運動を行って適正体重を維持するようにしましょう。
特にジョギングやウォーキング・スイミング・エアロビクスなどの有酸素運動は、脂肪燃焼効果が高いためおすすめです。日頃から運動習慣がない人はウォーキングから初めてみるのも効果的でしょう。
より効果を高めるなら、交感神経が活発に働く朝です。交感神経が優位になると、筋肉への血流が促進されて体内のエネルギーを消費する基礎代謝も増加します。
γ-gtpを一つの指標にして食生活の改善を
肝臓には神経が通っておらず、ダメージを受けても痛みなどの自覚症状がありません。そのため肝臓の病気は自覚症状がないまま進行していきます。これが、肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんです。そのためお酒を飲む機会が多い人は飲酒量の改善が欠かせません。
また薬や脂肪肝で肝細胞が壊れることでもγ-gtpの数値は上昇します。適度な運動や食生活の改善・健康診断の定期的な受診など自身の体のケアは欠かさないようにしてください。健診結果によりγ-gtpの数値が高いと認められた場合は、医師に相談のうえ適切な処置を取りましょう。
監修者 原 明子(看護師・保健師)
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