妊娠中にプロテイン飲むのはダメ?

結論として、妊娠中にプロテインを飲むこと自体には問題ありません。

ダメといわれることもありますが、過剰に摂取することは好ましくないものの、通常の食事で不足しがちなタンパク質を補助するためにプロテインを摂取することは問題ありません。

ただし、日常生活でタンパク質を十分に摂取できている場合は、無理にプロテインを摂取する必要はありません。

プロテインとはそもそも、タンパク質を英訳した言葉であり、語源はギリシャ語のproteios(プロティオス/「最も重要」の意味)です。タンパク質は人体の筋肉・肌・爪・髪・内臓などあらゆる部分に存在しており、その種類はおよそ10万ともいわれています。

そのようなタンパク質ですが、食材の中では肉や魚・卵・野菜・乳製品・大豆製品などに多く含まれています。おなかの赤ちゃんの筋肉や臓器をつくり出すために、タンパク質は欠かせません。そのため妊娠中は非妊娠期よりも多くのタンパク質を摂取するよう厚生労働省は推奨しています。

妊娠初期にタンパク質摂取量が極端に低かった母親から生まれた子どもが、3歳時期に発達の遅れが見られる傾向があるとした研究結果もあります(山梨大学エコチル調査甲信ユニットセンターの調査・研究)。おなかの子のため、そして自分のためにも、タンパク質の摂取は欠かさないようにしたいですね。

手軽で便利なプロテインですが、プロテインにも様々な種類のものがあり、中には糖分や人工甘味料が多めに含まれているものも存在します。これらはプロテインを飲みやすくするために配合されていることがあるため、成分表示を確認するようにしましょう。気になる方は医師に相談して摂取するようにしてください。複合的に摂取してしまう人工甘味料なども加味すると、良質なプロテインを節度ある分量、摂取することが大切でしょう。

妊娠中のソイプロテイン

妊娠中のソイプロテインは、適量であれば摂取しても問題ありません。不足しがちな食生活に補助する目的で適量摂取する分には構いませんが、栄養が足りている日々の食生活に上乗せして摂取することは避けるべきでしょう。

ソイプロテインに含まれる大豆イソフラボンは、胎児の生殖機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています。内閣府の食品安全委員会が行った妊娠動物による調査によると、高濃度の大豆イソフラボンを投与した場合に胎児の生殖機能への影響などを示唆する報告がありました。

ヒトにおいても過剰摂取によるホルモンバランスの乱れなどが懸念されるため、避けたほうが無難でしょう。

イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。イソフラボンによって肌や髪のケア・女性らしい体づくりなど美容効果が期待できるものの、摂取しすぎによってホルモンバランスが崩れるなどの症状が現れることもあるようです。

ビタミンA配合プロテインには注意

妊娠中はビタミンAの摂り過ぎに気をつけましょう。ビタミンAは視覚・聴覚の機能維持や皮膚・粘膜を正常に保つ役割を果たす栄養素です。す。

ビタミンAを過剰に摂取すると、胎児に先天性の異常(耳・頭蓋・眼球・肺・心臓などに奇形が生じる)が見られる可能性が指摘されています。過剰摂取は禁物と心得ておきましょう。

このような過剰摂取を危惧して、β-カロテンが推奨されています。β-カロテンはビタミンAの一種であり、体内に入るとビタミンAへと変化しますが、必要なければβ-カロテンのまま吸収される特徴があります。

足りない時だけビタミンAへ変化するため、β-カロテンによるビタミンAの過剰症を引き起こすことはありません。そのため、人参やトマトなどの植物性食品を積極的に摂取したいですね。

なお、厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、成人女性の一日あたりビタミンA推奨摂取量は650〜700μgRAE(妊娠中期までの方も同量)です。

妊娠後期になると必要量が増え、730〜780μgRAEが必要とされています。これは皮つきで生の人参なら100g、小松菜なら300g、生のほうれん草なら200gと同量です。

プロテインを摂取する前にかかりつけ医に相談

プロテインは、自身の食生活で本当にタンパク質が不足しているかを確認したうえで摂取するほうが望ましいでしょう。プロテインの摂取に問題がないか、一度かかりつけ医に相談しましょう。

プロテインは適正量を守って飲む

プロテインは手軽にタンパク質を摂取できる便利なものですが、摂取のし過ぎには注意してください。プロテインの種類によってはタンパク質・糖質の含有量が異なり、栄養過多になる恐れがあります。

あくまで通常の食生活のみでは不足しがちな場合に補助するものとしてとらえ、タンパク質は基本的に食事から摂取するよう心がけましょう。

妊娠中のタンパク質摂取量は?

体によいことが分かったタンパク質ですが、妊娠中に一体どの程度の量を摂取すればよいのでしょうか。

妊娠中にタンパク質が必要な理由

妊娠中はタンパク質の必要量が通常時よりも10~25g程度増えるといわれています。厚生労働省の日本人の食事摂取基準2020年版によると、タンパク質の一日当たり摂取推奨量は、18歳以上の成人男性なら65g・成人女性なら50gとされています。

よって、妊娠中は60~75g程度が必要となります。一日3回食事をする場合、一食あたりの目安摂取量を20~25gと認識しておきましょう。

また、タンパク質には食欲抑制といった特徴もあります。タンパク質を消化する過程で分泌されるコレシストキニンやGLP1などのホルモンには、食欲を抑える効果があります。

ほかにも、妊娠中は睡眠不足に悩まされることも少なくありません。朝にタンパク質を摂取することで、タンパク質を構成するアミノ酸の一つ「トリプトファン」が日中に「セロトニン」へと変化します。

セロトニンは夜になると睡眠を促すホルモンである「メラトニン」へと変化することが知られており、これが深い眠りを誘います。妊娠中にありがちな、ホルモンバランスの乱れによる夜眠れなくなる症状に効果が期待できるかもしれません。

ただし、つわりの症状には個人差があり、ポテトフライだけなら食べられるなど食べられるものが限られてしまう方も少なくありません。妊娠するまでは好きだった食べものが食べられなくなる方もみられます。

そのため、自身が食べられるもののみをしっかり摂取することも大切です。胎児のためにと無理してタンパク質が豊富な食材を摂取しようとしても、体が受け付けないこともあります。どのようなものを食べるのが望ましいのか、一度かかりつけ医に相談してみましょう。

妊娠中に摂りたいタンパク質の量

前述しましたが、通常時(一日あたり50g)と比較した妊娠中におけるタンパク質の摂取推奨量は、妊娠初期なら+10g、妊娠後期なら+25gです。妊娠中は何かと忙しく、肉や魚・野菜などを料理する余裕がない方も少なくありません。

魚は肉や卵と比べて動物性脂質が少なく、消化のよい食材として知られています。過剰摂取は禁物ですが、鮭などはタンパク質の分解・吸収を手助けするビタミンB6も豊富に含まれているため、積極的に摂取したいですね。

妊娠中に必要なエネルギー(カロリー)

文部科学省が掲載している日本食品標準成分表2020年版によると、

  • 牛もも肉100gあたり19.5g
  • 鶏むね肉100gあたり21.3g
  • 鮭80gあたり17.8g
  • 全卵M1個あたり6.1g
  • 納豆パック(40g)あたり6.6g
  • 牛乳コップ一杯(200g)あたり6.6g
  • ヨーグルト(全脂無糖)100gあたり3.6g
  • チーズ20g(スライスチーズ1枚)あたり4.5g

となっています。エネルギー不足にならないよう、しっかりと摂取していきたいですね。

栄養はバランスよく摂る

いくらタンパク質が必要不可欠といっても、タンパク質のみを摂取すればいいわけではありません。人間の体にとって必要とされる5大栄養素(糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラル)を無駄なく摂取する必要があります。

肉や魚はタンパク質を摂取できる反面、脂質も含まれています。多くの肉を食べることで必要以上の脂質まで摂取してしまうと、肥満の原因となります。主食・主菜・副菜・果物・乳製品をバランスよく摂取するよう意識しましょう。厚生労働省と農林水産省が提唱している食事バランスガイドを参考にしてもよいでしょう。

まとめ

妊娠中におけるプロテインは、不足しがちなたんぱく質を補給する場合は摂取すべきです。ですが、普段の食生活で肉や魚・野菜などの食材からタンパク質が摂取できている場合、無理にプロテインを取る必要はありません。プロテインはタンパク質を補給する機能に優れていますが、過剰摂取は体のバランスを崩してしまうためです。

気になる方はかかりつけ医に相談してみることをおすすめします。