体にとって必要とされる炭水化物ですが、一体どのようなものを指すのか、不足するとどうなるのか、どの程度の量を摂取すればいいのかわからなくなっていませんか。本記事では炭水化物の仕組みと人が1日に摂取すべき推奨量を、具体的な食材とともにご紹介しています。

近年では炭水化物ダイエットと称して炭水化物を減らす取り組みもあるようですが、過度に摂取量を減らすと体を壊す原因になります。自身の体の不調に違和感を感じている人はぜひご覧ください。

炭水化物とは

人が毎日摂取すべき重要な栄養素を3大栄養素といいます。そのなかでも摂取して比較的短時間で体内に吸収され、体や脳エネルギー源となるが炭水化物です。

炭水化物は、体内でエネルギーを産み出す糖質とエネルギーを産み出さない食物繊維に大別されます。そのなかでも糖質は1~2個の単糖類から構成される糖類、3~9個の単糖類から構成される少糖類、10個以上の単糖類から構成される多糖類などに分類されます。

糖類は甘みの主成分でもあり、食品の嗜好性の向上や保存に役立ちます。

糖質

代表的な糖質を含む食品には以下のものがあります。

  • 穀類(ご飯・パン・麺類)
  • 野菜(いも類)
  • 果物(りんご・みかんなど)

糖質の役割はエネルギーを産み出すことですが、ほかにも脳を動かすエネルギー・体温調節の役割があります。脳はブドウ糖を唯一の栄養源としており、基本的に1日中ブドウ糖を消費しています。脳が働くためにはブドウ糖の摂取が欠かせません。ブドウ糖はさまざまな栄養素のなかでも糖質からのみ産み出されるため、必要不可欠といえるでしょう。

脳の1日あたりのブドウ糖消費量は120g程度とされています。不足すると思考能力・集中力の低下・イライラなど体に不具合が起きてしまいます。不足することがないよう注意しましょう。

なお、糖質が不足すると低血糖になります。血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を指しており、数値が低くなると以下のような症状が起きます。

  • 動悸が起こる
  • 冷や汗が出る
  • 眠くなる
  • 激しい空腹が起きる
  • イライラや不安感が募る
  • 痙攣を起こしたり意識がなくなったりする
  • 筋肉などのタンパク質を分解するため筋力低下につながる

低血糖の状態にならないよう、しっかり糖質を摂取しましょう。

また、過剰に摂取した糖質は分解されずに中性脂肪となり、肥満や生活習慣病の原因となります。過不足のないよう摂取することが大切です。

また、果糖を摂りすぎると肝臓で中性脂肪に合成され高中性脂肪血症となる恐れが、またショ糖の摂りすぎは歯を溶かす有機酸の産生により虫歯を引き起こしやすくなります。

食物繊維

代表的な食物繊維が含まれている食品には以下のものがあります。

  • きのこ類(しめじ・えのき・エリンギ・椎茸・まいたけなど)
  • いも類(こんにゃくなど)
  • 野菜類(ごぼう・モロヘイヤ・ブロッコリーなど)
  • 海藻(ひじきなど)
  • 豆類(納豆など)

食物繊維は糖質と異なり、体を動かすエネルギーとはなりません。厳密には腸内細菌の働きによって食物繊維からもエネルギーが産生されますが、その量はごくわずかです。そのため多くの場合、食物繊維からのエネルギー産生量はゼロとされています。

その反面、食物繊維は腸における排泄を促進させます。食物繊維はその字のとおり、繊維状であるため胃のなかで分解されにくい特性を持ちます。そのため腸に留まった便や有害物質の排出を促し、快便に役立ちます。そのほかにも以下のような働きがあります。

  • 食後の血糖値の上昇を抑える
  • 血中コレステロール値を下げる
  • 高血圧を予防する
  • 有害物質の排出により大腸がんのリスク予防になる
  • 善玉菌が増えて腸内環境が改善される

低血糖の状態には老若男女問わず起こりえます。とくに若い女性がダイエットのために炭水化物を減らす食事をし、目標体重をクリアして通常時の炭水化物摂取量に元した際、血糖値を下げるインスリンの分泌量が不安定になることがあります。血糖値が安定しにくくなることで、かえって精神的に不安定になりやすくなります。

また、残業などによって夕食が遅くなりがちな男性も要注意です。炭水化物の摂りすぎによってインスリンが過剰に分泌され、血糖値が急激に下がってしまうことがあります。また、怒りやすくなったり判断力が鈍ったりすることもあります。

参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tansuikabutsu.html

炭水化物のはたらき

炭水化物の役割は、エネルギー源となるブドウ糖を体内の各組織に行き渡らせることです。炭水化物のうち、ショ糖やでんぷんなどの糖質は1gあたり4kcalのエネルギーを産生します。炭水化物の役割はエネルギーの産生とともに、脳・神経組織・赤血球・腎尿細管・酸素不足の骨格筋などへのブドウ糖の供給があります。脳以外の臓器もブドウ糖のみを唯一の栄養源としています。過不足のないよう摂取しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042632.pdf

炭水化物の1日の推奨摂取量

男女とも1日に摂取する全エネルギーのうち50〜65%の摂取が必要とされます。

1日に摂取するエネルギーは平均的な人で2,000kcalであり、このうちの50~65%は1,000kcal〜1,300kcalとなります。これを炭水化物の摂取量に換算すると1日250〜325gとなります。食事量で換算すると以下のようになります。

  • おにぎり:5~8個
  • ロールパン:13~14個
  • マカロニスパゲッティ:3~4束

また、食物繊維のみに限定すると1日の推奨摂取量は以下のとおりです。

  • 18~64歳男性:21g以上
  • 18~64歳女性:18g以上

具体的な食材に含まれる食物繊維の例は以下です。

  • モロヘイヤ茎葉生:5.9g(1食100gあたり)
  • ごぼう根生:5.7g(1食180gあたり)
  • 乾燥椎茸:46.7g(100gあたり換算)

小さな子どもの場合、ご飯を残すことも多く、炭水化物摂取量が少なくなることがあります。そのためおやつを通して炭水化物の摂取を増やすとよいでしょう。

近年は炭水化物ダイエットと称し糖質を減らして痩せようとする取り組みも見られますが、糖質を減らすと体は筋肉を分解し、筋肉に含まれるたんぱく質を分解してエネルギーを作り出さなければなりません。筋肉量が低下すると基礎代謝量が下がり、結果的に太りやすく痩せにくい体を作り上げてしまいます。摂取量を過度に減らすことはやめましょう。

また、炭水化物を減らしてたんぱく質を摂取するのもほどほどにすべきです。肝臓には、体内の糖質が不足した場合にたんぱく質を糖類に変換する役割があります。その際にアンモニアが生成されます。アンモニアは尿素へと変換され、体外に排出しなければいけませんが、尿素への変換回数が多い分だけ肝臓に負担をかけてしまいます。アンモニアには体臭を生じさせることもあるため、注意が必要です。

それでも、糖質カットはダイエット効果が高いといわれています。そこで、食事以外の糖質を制限することをおすすめします。以下の食品の摂取量が多い場合はこれらをカットすることから始めてみましょう。野菜の代わりに野菜ジュースを飲んでいる人も多いですが、野菜ジュースには食物繊維がほとんど含まれておらず、糖分が追加されています。

  • お菓子類
  • 清涼飲料水
  • 野菜ジュース
  • 加糖ヨーグルト

これらをカットしたうえで、1食あたりおにぎり1個分は食べましょう。糖質は腹持ちがよく、飢餓感からくる過食行動を抑えるのに役立ちます。極端に糖質を減らしてしまうと空腹を感じ、空腹を満たすために結果的に間食してしまう懸念もあります。
参考:https://www.jafanet.jp/hnblog/column/2015/07/post-26.html

まとめ

炭水化物の摂取量は多くても少なくても問題が生じるため、適度な摂取をすることが大切です。近年は情報があふれ、どの程度の摂取量が適切なのか分かりにくいことも少なくありません。食事はバランスが大切なので、節度ある栄養の摂取を心がけましょう。

また、炭水化物だけでなく脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルも摂取するようにしてください。