近年、健康志向やセリアック病などグルテンにアレルギー反応を示す人に注目が集まっており、商品選びの際に、「グルテンフリー」という言葉をよく見かけます。商品の表示は「グルテンフリー」と「ノングルテン」に分類されます。

ここで疑問なのが、この二つは同じ意味なのでしょうか?また、グルテンフリーの基準は世界共通なのでしょうか?そして、グルテンフリー認証はどのように行われているのでしょうか?これらの疑問を解決するために、グルテンフリーの定義、グルテンフリーとノングルテンの違いを解説します。さらに、グルテンフリーの認証方法や国際的な基準についても紹介します。

1:グルテンフリーとは元々はセリアック病患者のための表示方法

セリアック病は、小麦などのたんぱく質の一種であるグルテンが原因で小腸に炎症を引き起こし、腸での吸収障害が起こる病気です。セリアック病の患者が食事の選択を安心して行えるように、”グルテンフリー”の表示が設けられました。これは、食品がグルテンを含んでいない、あるいはその含有量が極めて少ないことを意味しています。この表示を見ることで、セリアック病の患者は食品が自身にとって安全であることをより分かりやすく認識できます。

そして、セリアック病の患者だけでなく、グルテンによるアレルギーを持つ人や、グルテンに対して敏感に反応があると感じている人にとっても、このグルテンフリー表示は安心感をもたらしてくれます。

2:グルテンフリーとノングルテンの違いを理解しよう

グルテンフリーとノングルテン。この2つは似ているようですが異なります。グルテンフリーとは、グルテンというたんぱく質を含まない、あるいはほとんど含んでいない食品を指します。これはセリアック病など、グルテン関連疾患を持つ人の助けになるために生まれた言葉で、穀物の原材料が含まれていても「グルテンが20ppm以下」であれば、グルテンフリーと言えます。

一方、ノングルテンとは穀物の原材料を一切含まない、つまり「もともとグルテンが含まれていない」食品を指します。この違いを理解すれば、グルテンフリーの食品選びに役立つはずです。

次にグルテンフリーとノングルテンについて解説します。

  • 2-1:グルテンフリーとは
  • 2-2:ノングルテンとは

2-1:グルテンフリーとは

グルテンフリーとは、食品に含まれるグルテンというたんぱく質が少ないか、全く含まれていない状態を指します。穀物の中には特に小麦、大麦、ライ麦がグルテンを大量に含んでおり、これがパンやなどの食品にもちもちとした食感を与えます。しかし、グルテンが原因で食品を制限しなければいけない人もいます。

現代社会においては、健康とダイエットを重視する意識が高まり、グルテンフリーの食品が注目を浴びるようになりました。

しかし、食品に「グルテンフリー」の表示があるからといって、それが本当に安全であるとは限りません。製造販売会社が自主的に表示をしていることもあり、安全性を確認し正確に理解した上で食品を選ぶ必要があります。

2-2:ノングルテンとは

ノングルテンは、原材料も含めてグルテンを一切使用していない製品のみが表示をすることができます。そのためノングルテン表示の製品は、グルテンが一切含まれていないことが保証されます。

どの程度グルテンを避ける必要があるのか、あるいは完全に避けるべきなのかで選ぶべき製品は異なります。グルテンフリーでもノングルテンでも製品によっては製造過程でグルテンが混入する可能性があります。完全にグルテンを避けたい場合は、製造過程も含めたグルテンフリー認証を受けている製品を選ぶべきです。

3:事前に知っておきたいグルテンフリー認証の知識

グルテンフリー製品を選ぶ際に一番大切なのは、製品の認証方法です。一部の製品は、製造販売者が自主的に「グルテンフリー」を表示しているだけで、製品にグルテンが含まれていないことを完全に保証するものではありません。グルテンに反応がある方がこのことを知らないまま、これらの製品を選んでしまうと、健康に悪影響を与える可能性があります。そのため、グルテンフリー認証とは何か、どの製品を選べばいいのかについて理解を深めることが大切です。

次に、グルテンフリー表示のポイントを解説していきます。

  • 3-1:商品ラベルの「グルテンフリー」は必ずしも安全を保証するものではない
  • 3-2:国際的認証は「GFCOが認証したGFマーク」
  • 3-3:「ノングルテン」は日本独自の表示方法

3-1:商品ラベルの「グルテンフリー」は必ずしも安全を保証するものではない

「グルテンフリー」とラベルに書かれた商品に安心して手を出してはいませんか?グルテンフリーと表示されていても必ずしも安全とは限りません。なぜなら、商品ラベルは製造販売企業の自主的な表示が主流で、法的な制約が弱く、表示基準もバラバラなのです。

そのため「グルテンフリー」の表示があっても、それが実際の製品と一致するかは製造販売企業の信頼度で決まります。購入する前に、企業のグルテンフリーへの認識や製造工程について調べることが重要です。

海外では、商品に「グルテンフリー認証マーク」がつけられることで、消費者は安全性を確認できます。認証マークは、申請と審査を経て初めて得られます。製造工程や原材料が厳密にチェックされるので、マークのある商品は一定の品質と安全性が保証されます。

日本ではそのような認証マークは少数で、多くの商品は企業の自主表示に頼っています。そのため、「グルテンフリー」の表示がある商品を選ぶ際には、自主表示をしている企業の品質管理や製造過程を把握することが重要であることを覚えておいてください。グルテンフリー商品は、企業の考え方や製造過程に左右されることを理解して選択しましょう。

3-2:国際的認証は「GFCOが認証したGFマーク」

「GFCO認証のGFマーク」はグルテンフリーの認証として一番信頼性が高いです。GFCOとはGluten-Free Certification Organizationの略称で、アメリカでセリアック病患者と他のグルテン関連疾患患者の協会により設立された世界中の企業の商品を認証している非営利団体です。GFCOの認証マークは国際的に消費者に信頼されており、セリアック病やグルテン不耐性をもつ消費者に食品の安全性を保証するために厳格な基準で認証を実施しています。

GFCO認証製品には、パッケージにGFマークが付いています。このマークが示すのは、製品がグルテンフリーであり、GFCOの厳格な基準を満たしているという証拠です。製品中のグルテン含有量が10ppm以下であり、製造過程でグルテンに汚染されていないことが求められます。

「GFCO認証のGFマーク」は、製品選びの信頼性と安全性を保証します。グルテンフリー製品を選びたい場合、このマークを目安にしてみてください。でも、このマークが付いているからと言って、全ての人が安全という訳ではありません。体質や症状によって、より厳しいグルテンフリーの基準が必要な人もいます。体の状況を理解し、適切な選択を心がけましょう。

3-3:「ノングルテン」は日本独自の表示方法

グルテンフリーを調べると、「ノングルテン」という言葉を見かけることがあると思います。「ノングルテン」は日本独特の表記で、米粉の認定制度です。製品中のグルテンの含有量が1ppm以下であることを示しています。

「ノングルテン」表記と「グルテンフリー」表記はまったく別の基準で、どちらが優れているとは言えません。体調や目的に応じて選ぶことをおすすめします。

「ノングルテン」表記は日本特有のため、海外製品には見られません。海外製品は主にグルテンフリー表記が使われます。

4:各国のグルテンフリーの表示について

グルテンフリーの表示基準は、国や地域によって様々です。日本、アメリカ、カナダ、EU、オーストラリア/ニュージーランド、アルゼンチンでは、その基準や認証制度はそれぞれ異なります。そのため、グルテンフリーの商品を選ぶ時、国ごとの表示基準を理解することが重要になります。グルテンフリー製品を選ぶ理由が、アレルギーやセリアック病対策であれば、各国の認証基準を詳しく知る必要はありませんが、日本では「小麦」がアレルギー表示義務のある7品目に含まれているため、グルテンフリー表示のある商品を選ぶことで、グルテンを避けることが可能です。それでも、より安全かつ確実に商品を選ぶためには各国の認証基準も理解することが重要です。

各国ごとの詳細な基準について解説します。

  • 4-1:日本
  • 4-2:アメリカ
  • 4-3:カナダ
  • 4-4:EU
  • 4-5:オーストラリア/ニュージーランド
  • 4-6:アルゼンチン

4-1:日本

日本で販売されている食品でグルテンフリーに関する表示がされているのは、日本米粉協会によるノングルテン、GFCOのGFマーク、グルテンフリーと表記された3つです。日本には食品表示に関する法律がありますが、「ノングルテン」や「グルテンフリー」の表示については含まれていません。イネ科の穀物が含まれていない食品については、製造業者は自主的に「ノングルテン」や「グルテンフリー」の表示を行うことがあります。

日本のグルテンフリー表示は、国や第三者機関がグルテンフリーであることを認証したものではないため、日本ではグルテンフリー認証を受けた食品の選択が重要です。グルテンフリー認証されたものは製造過程で厳しい管理を受けている証であり、その証となる認証マークがパッケージに記載されています。そのため、認証マークの確認は安心できる食品選びの一つとなります。

4-2:アメリカ

アメリカで「グルテンフリー」とラベル表示される食品は、食品と医薬品局(FDA)の基準を満たす必要があります。FDAの基準により、「グルテンフリー」とマークされた食品では、グルテンを含む麦、ライ、大麦の混入が厳格に管理されます。

具体的には、グルテンを含む穀物から製造された食品や、その混入可能性のある食品は、「グルテンフリー」表示の条件として、グルテン含有量が20ppm(parts per million)以下であることが必要とされます。「ppm」は食品の1,000,000分の1を表す単位で、20ppmはその食品の1,000,000分の1以下のグルテン含有量を意味します。

ただし、「グルテンフリー」とラベル表示があっても、アレルギーを引き起こす可能性のある他の成分が含まれることもあります。そのため、食品のラベルを詳細に読み、必要に応じて製造元に問い合わせることをおすすめします。

また、アメリカのグルテンフリー認証では、国際的なGFCO認証マークが付いていれば、その基準が満たされていると判断できます。しかし、自主表示のケースでは認証基準が異なる場合があります。認証マークだけでなく、製造元の情報や製品の成分表記などを確認する事が重要となります。

4-3:カナダ

カナダではグルテンフリー表示の基準はCanada Food Inspection Agency(カナダ食品検査庁)により厳格に定められています。グルテンフリー表示の食品は、セリアック症患者が安心して摂取できることを保証していなくてはなりません。そのため、食品に含まれるグルテンの量は、20ppm(parts per million)以下でなくてはなりません。これは、他の多くの国における基準と合致しています。

カナダは、どの食品にグルテンフリーの表示が可能かを明確に規制している点で特徴的です。普通、加工食品や特定の添加物、ビタミン、ミネラル、タンパク質、炭水化物を含む食品は、これらがグルテンを含んでいないことが確認されていなければなりません。

その上で、食品がビールや麦芽酢を含む場合、これらはグルテンの供給源であるため、グルテンフリーとは表示できません。なぜなら、ビールや麦芽酢は基本的に大麦から作られるもので、大麦はグルテンを含むからです。この点は、カナダの表示法が他の国と多少異なる部分であり、注意が求められます。

カナダにおいてグルテンフリー表示をするには、グルテンとしての含有量が20ppm以下であり、更にビールや麦芽酢を含まないことが必須条件となります。この基準を理解することは、グルテンフリー表示を含む食品を選択する際に重要となります。

ビールについては「ビールはグルテンフリーなの?グルテンフリービールの特徴とコンビニで買えるおすすめ商品」で解説しています。あわせて読んでみてください。

4-4:EU

ヨーロッパ連合(EU)のグルテンフリー表示には、グルテンの含有量が20ppm以下の製品は「グルテンフリー(giuten free)」、100ppm以下の製品は「超低グルテン(very low gluten)」と表示され、これはEU食品情報法(FIC)によって規定されています。乳児向け調製・補完食品への「グルテンフリー食品」「超グルテン食品」表示は禁止されています。

EUでは、グルテンフリー表示が許される製品は、グルテン含有量が20ppm以下でなければならず、それを超えて100ppm以下の製品には「超低グルテン」表示が必要とされています。これは、グルテンフリー製品が本当にセリアック病患者にとって安全に消費できる製品であることを保証するためです。消費者が混乱するような、国による表示法の違いを避け、明確な基準で一貫性を持つ表示法を設けるEUは、消費者に安心感を与えています。

4-5:オーストラリア/ニュージーランド

オーストラリアとニュージーランドのグルテンフリー表示は、規則により許可されない限り禁止されています。表示するには、検出可能なグルテンを含んでいないこと、オーツ麦およびそれらの製品を含んでいないこと、麦芽処理されたグルテンを含むシリアル、およびそれらの製品を含んでいないことが定められています。

グルテンフリーの表示は、グルテンを一切含んでいない商品だけが許されています。これは、セリアック病患者などグルテンに特別に敏感な人の安全を確保するための規定です。また、オーストラリアでは「低グルテン」表示も許可されており、その基準は商品100gあたりのグルテン含有量が最大20mg未満です。

なお、オーストラリアニュージーランド食品基準局によると、原材料に「トウモロコシ、大豆、ライス、テフ、ミレットなどのグルテンを含まない穀物」が含まれている商品も、それらが「グルテンフリー」であることを表示する必要があると定められています。このような厳格な基準により、オーストラリアとニュージーランドのグルテンフリー表示は高い信頼性があります。

4-6:アルゼンチン

アルゼンチンのグルテンフリー表示は世界でも特に厳格な方とされています。アルゼンチンの法律により、「グルテンフリー」と表示される食品や飲料、食品添加物は、特定の製造環境と規格に準拠したもののみに認められます。つまり、対象となる製品は「グルテン含有量、製造環境、原料などの観点から明確に特定されている」という特徴があります。

よって、アルゼンチンのグルテンフリー認証を持つ食品は、製品自体の安全性だけでなく、製造過程における厳しい審査をクリアした証明となります。アルゼンチンのグルテンフリー表示には、小麦、ライ麦、オーツ麦、大麦、その交雑品種及びその誘導物を10mg/kg以上含む製品への表示は認められていません。

これらの情報は、グルテンフリー食品を選ぶ際の参考になります。グルテンフリー認証には、国や地域により基準や審査が異なるので、国々の対応や情報を理解することで、より確実な選択をすることができます。

5:国際的な認証であるコーデックス委員会とは

コーデックス委員会は、食品規格についての国際的な基準を設定する目的で設立された組織です。WHOとFAOの傘下に位置づけられ、それぞれの規格作成にともない、各国の専門家の意見を考慮しつつ討議が行われています。食品に関わるあらゆる規格、食品の品質、安全性、ラベリング等の基準も取り扱っています。

特に、セリアック病患者やグルテンに対するアレルギーを持つ方にとって、国際的な基準によるグルテン含有量の規定は極めて重要です。各国はこの基準に従って食品の表示をすることで、消費者は安全に食品を選ぶことができます。

コーデックス委員会が設定する基準は、各国の法律や規則とは異なる、国際的な基準です。また、これらの基準は公式Webサイトで公開されており、食生活への理解を一層深める素材となります。

コーデックス基準によるグルテンフリー製品のグルテン含有量は、20ppm以下でなければなりません。これはグルテンフリー製品選びの一つの指標となります。

6:グルテンフリー認証を受けている製品でもグルテンが含まれる場合はある?

グルテンフリー認証を受けている製品にも、ある許容範囲内であればグルテンが含まれることがあります。認証基準を満たせば許可が出るため、製品に含まれているグルテンの量が基準内であれば許されてしまうのです。

グルテンフリーと表示されている食品の中には、1kgあたり20mg以下のグルテンを含むものも存在します。セリアック病などのグルテンアレルギーを持つ人でも、一般的には問題なく摂取できるとされているレベルです。

しかし、体調や病状によりこの基準が適用できない場合もあることを忘れてはいけません。微量のグルテンでさえも体調を悪化させる可能性がある人もいるのです。そのため、「グルテンフリー認証」があるからといって、医師や栄養士の指導を受けずに食べることは避けるべきです。

まとめ

この記事では、グルテンフリーとノングルテンの違い、グルテンフリーの認証制度や基準、そして各国での表示基準について説明しました。

グルテンを避けたい方は、グルテンフリーの認証がある商品を選びましょう。また、国により表示基準は異なるため、輸入商品を選ぶ際には各々の国による認証制度の違いや、認証マークの違いにも注意が必要です。食品を選ぶ際は、表示だけでなく、グルテンフリーの認証の有無やその意味を理解することが大切です。