「グルテンフリー」というフレーズに馴染みがあるでしょうか。「グルテンフリー」とは、小麦、ライ麦、大麦などに含まれる「グルテン」を避ける食事スタイルを指します。欧米では、健康や病気の治療に考慮してこの食事スタイルが導入されます。ところが、「グルテンフリーは日本人にはあまり効果がないのでは」という疑問もあるようです。それは真実なのでしょうか。

本記事では、グルテンフリーが日本人にどのような影響を及ぼすのか、その背景についても詳しく説明していきます。

1:グルテンフリーは日本人には意味がないの?

グルテンフリーとは、グルテンを避ける食事法を指します。グルテンは、パンやパスタなど小麦を主成分とする食品の質感や形を保つための大事な成分です。一部の人にとっては消化が難しく、アレルギーや過敏反応を引き起こすこともあります。

では、実際に日本人にグルテンフリーは必要なのでしょうか?

グルテンフリーは、もともと小麦アレルギーセリアック病といったグルテン摂取による健康被害を避ける為の食事法です。セリアック病は日本人の患者数も少ないことから「グルテンフリーは日本人には必要ない」との声もあります。

しかし、グルテンフリーは全ての人に必要というわけではありませんが、小麦による食物アレルギーを抱える方や体質が敏感な人にとっては、グルテンフリーの食事が体質に適することもあります。また、健康に真剣に向き合いたい人は、体調の変化を見るために一度グルテンフリーを試す価値があります。
以下では次のポイントについて詳しく説明します。

  • 1-1:体質により小麦に適合しない人にとってのグルテンフリーの効果

1-1:小麦に対する反応が強い体質の人にとってのグルテンフリーの効果

小麦への過敏性やアレルギー反応を持つ方にとって、グルテンフリーは適切な選択となります。

小麦はパン、パスタ、うどん、ラーメンなど、私たちの日常食に欠かせません。しかし、小麦のたんぱく質である「グルテン」を体が適切に処理できないことで、消化器系の問題が発生します。これが「小麦アレルギー」などの過敏性やアレルギー反応です。

小麦アレルギーの人は、小麦を含む食品を食べると免疫反応を起こし、皮膚炎、喘息、腹痛、下痢などの症状を呈する場合があります。これらの症状が繰り返されると、体調が悪化し、生活の質も下がる可能性があります。

これらの問題を抱える人は、グルテンフリー食を選ぶことで、グルテンを含む小麦を避けつつ、食生活を楽しむことができます。これこそが、グルテンフリーが私たち日本人にとって重要な理由の一つと言えるでしょう。

2:なぜ近年グルテンフリーが注目されているのか

健康への意識の高まりとアレルギー問題の増加は、グルテンフリーという選択肢に目を向けさせています。この注目の背後には、いくつかの理由があります。

最初の理由としては、アレルギーを抱える人の増加によるものです。アメリカやヨーロッパでは、小麦アレルギーやセリアック病の患者が増え、グルテンフリーは選択肢の一つとして頻繁に選ばれます。

次の理由は、アスリートや著名人がグルテンフリーを取り入れていることが大きな影響を持っています。特に、消化が良くエネルギーを高効率で取り入れることができるとして、アスリートたちはグルテンフリーを選択しています。その食事法を紹介することで、一般の人の間にも広まっているのです。ただし、この選択には注意が必要で、その詳細については次章で説明していきます。

以下では、次の2つのポイントについてさらに詳しく解説します。

  • 2-1:セリアック病・小麦アレルギーの増加の現状
  • 2-2:アスリートなどの著名人の影響

2-1:セリアック病・小麦アレルギー増加の現状

近年、小麦アレルギーとセリアック病、つまり小麦由来のグルテンによる健康問題が見受けられ、グルテンフリーダイエットに注目が集まっています。特にセリアック病は、グルテン摂取による慢性炎症性疾患で、特定のアレルギー疾患とは異なり、グルテンが直接的な原因となります。患者数は日本の人口約1%と見込まれていますが、実際の数値についてはまだ言えません。

小麦アレルギーはグルテン等が原因で、全人口の0.1%〜1%が小麦に対するアレルギーを有していると推測されます。その対策として食生活に注意が必要で、小麦を含まない食品選びが重要となります。これがグルテンフリー食の需要を生んでいます。

小麦アレルギーとは異なる食物過敏症として、非セリアックグルテン過敏症が挙げられます。これは小麦摂取により全身の症状を引き起こす疾病で、これも小麦だけでなく他の穀物にも反応する症候群です。

これらの疾患が増えるにつれ、グルテンフリーダイエットへの注目も高まっています。とはいえ必ずしも全ての人がグルテンを避けるべきではなく、自身がグルテンに反応するかどうかは適切な医療機関で検査を受けて確認することが大切なのです。

小麦アレルギーの原因については「小麦アレルギーの原因とは|原因物質から治し方まで」で解説しています。あわせて読んでみてください。

2-2:アスリートなどの著名人の影響

アスリートや著名人がグルテンフリーに関心を寄せる背景としては、体調管理やパフォーマンス向上が挙げられます。たとえば、テニスのノバク・ジョコビッチ選手は、グルテンを含む食品を避けることでアレルギーや喘息の症状が軽減し、体調が好転したと公言しています。

これらの著名人の影響により、一般にもグルテンフリーへの理解が広がっています。しかし、食事選択は一人ひとりの体質や生活スタイルによるべきで、ジョコビッチ選手のようなやり方が全ての人に合うわけではないということを忘れてはいけません。

なぜ著名人がグルテンフリーを選び、それが多くの人を魅了するのか。その要因を次の3点にまとめてみたいと思います。

  • 体調改善の体験談: ジョコビッチ選手のような著名人が体調改善の体験を話すことで、グルテンフリーという選択肢が一般に広く認知されます。
  • ビジュアルな魅力: SNS上でグルテンフリーの食品やレシピの写真を共有することで、その魅力が視覚から伝わり、より身近に感じられます。
  • 自らの体感: グルテンフリーダイエットを一度試し、体の変化を体験したことが、継続したくなる動機づける要因になっていることもあります。

アスリートや著名人のグルテンフリーダイエットによる影響力は大きいものの、それはあくまで参考の一環であり、各自の体調や生活状況を考慮した上での食事選択が大切であると認識することが必要です。

3:グルテンフリー生活の注意点

グルテンフリー生活を始める際、いくつか注意が必要です。まず、「グルテン=体に悪い」という認識は誤解です。また、「グルテンフリー=痩せる」という認識も誤りです。グルテンフリーの食品は必ずしも低エネルギーとは限らず、高カロリーのものもあります。体重を下げるためにグルテンフリーを選ぶのではなく、健康のために食生活全体を見直すことをおすすめします。過度なグルテンフリーは、食品の選択肢を狭め、栄養バランスを失う可能性もありますので、注意が必要です。これらのことから、グルテンフリーが全ての人に適しているわけではないということになります。

具体的には次の3つのポイントを押さえておくと良いでしょう。

  • 3-1:グルテン=「体に悪い」という認識の誤り
  • 3-2:グルテンフリー生活をすると痩せるわけではないと知っておく
  • 3-3:過度なグルテンフリーは体に悪影響の可能性も

3-1:グルテン=「体に悪い」という認識の誤り

まず、グルテン=「体に悪い」が実は誤解であることを理解しましょう。グルテンは、小麦や麦に自然に含まれるタンパク質で、一般的には健康に良い栄養源とされています。つまり、多くの人にとって、グルテン含む食品は体に害を及ぼすことはありません。しかし、グルテン食品を食べたときに体調が悪くなる人もいます。だからと言って「グルテンは体に悪い」とは一概には言い切れません。個々の体質に合わせた食事のコントロールが大事です。 グルテンは毒ではなく、全ての人が避けるべきというわけではありません。

自身の体調やグルテンへの反応を確かめるため、一時的にグルテンフリーの食事を試すのも一つの選択肢です。ただし、それは「適切な診断があってのこと」であり、自身だけの判断ではありません。安易にグルテンを削ることで、食事のバランスを乱す可能性があることも覚えておいてください。

3-2:グルテンフリー生活をすると痩せるわけではないと知っておく

よく、グルテンフリーの食生活を送ると体重が減るとの誤解が生じていますが、それは正確な情報ではありません。グルテンフリーとは、グルテンを含む食品を食事から排除し、体が必要とする栄養素を適切なバランスで摂る食生活のことです。これは直接的に体重を減らす狙いの生活ではありません。グルテンフリー生活でカロリー摂取自体は減らせますが、それにより食事のバリエーションが偏ると栄養バランスが悪くなる可能性があります。

大切なことは、グルテンフリー生活で体重が減るのは食事の組み立て次第であり、グルテンフリー独自の性質によるものではないということを認識することです。 グルテンフリーダイエットをする際は、バランスの良い食事を摂ること、適度な運動をすることが重要となります。栄養偏りのないよう、ビタミンやミネラルなどの摂取も忘れずに行うべきです。

3-3:過度なグルテンフリーは体に悪影響を与える可能性も

バランスの良い食事が健康維持に不可欠なのは広く認知されています。一方、グルテンフリーの食事は一部の栄養が不足しやすいというリスクがあります。小麦などの麦類は、ビタミンB群や鉄分、食物繊維といった、私たちの健康に欠かせない栄養を補っています。これらがグルテンフリーの食事では不足すると、体調不良を引き起こす可能性があります。

さらに、小麦の代用として用いられる他の穀物や澱粉は、小麦に比べて栄養価が低くカロリーが高い可能性があるため、グルテンフリーの食事に移行すると摂取カロリーが増え、過度の体重増加に繋がるリスクもあります。

また、食品の選択肢が減ることで食事の偏りが生じ、その結果、食事からの楽しみや満足感が失われ、食事がストレスになる可能性も無視できません。

したがって、栄養バランスの乱れや摂取カロリーの増加、食事の偏りなど、グルテンフリー生活に潜むリスクを理解するためにも、グルテンフリーに移行する前に適切な知識と理解が必要です。それを踏まえ、適度なバランスを保つことの重要性を認識しつつ、食事を楽しむことが大切です

4:グルテンフリー生活のメリットとデメリット

グルテンフリー生活は、メリットとデメリットが存在します。その中の一つで、意外と見落とされがちなメリットは、食の意識が高まるという点です。グルテンフリー生活には、食材の成分表の確認や、食材選びの見直しが必要となり、結果として食に対する意識が高まり、より健康的な食生活へと繋がります。その一方でデメリットとして、栄養バランスの偏りが懸念されます。

これより以下の点について、詳しく見ていきましょう。

  • 4-1:グルテンフリー生活のメリット
  • 4-2:グルテンフリー生活のデメリット

4-1:グルテンフリー生活のメリット

グルテンフリー生活は、グルテンに対して反応する体質の人にとって、体調の改善と食の質の向上をもたらします。特に、グルテンを含む食物の摂取による体調不良を抱えるセリアック病患者や、アレルギー反応を持つ方々にとっては、改善の一助となるでしょう。そして、自らの食習慣を見つめ直すきっかけともなり、食の安全性についても考える機会になります。

食の基本をフレッシュな果物や野菜、肉、魚、豆、種子などの自然食品に置き換えると、食生活全体が健康的になるという利点もあります。加工食品からの距離を置くことで、体に不要な化学物質を摂取するのを防げます。ただし、健康的な食生活はグルテンフリーだけで達成できるものではなく、全体の栄養バランスが重要となります。

一方で、グルテン不要な人が強制的にグルテンフリーにすると、栄養が偏りがちになるため注意が必要です。グルテンフリー生活を始めるなら、栄養バランスをよく理解し、適切な理由が必要です。

グルテンに過敏性を持つ方は、グルテンフリーによる体調改善を体感することもあります。これは一般的に全ての人に通じるものではなく、特定の体質に対する対策となります。この点を理解した上で、健康的なグルテンフリー生活を送るための適切な対応を心掛けることが大切です。

4-2:グルテンフリー生活のデメリット

グルテンフリー生活にはデメリットもあることを覚えておいてください。まず一つ目として、グルテンフリーの食品は一般的なものに比べて高価なことがあります。製法や使用原料が特殊なため、費用がかさみます。

また、二つ目のデメリットとして、食事の選択肢が限られます。特に、小麦を主成分とする日本の食生活には適合し難く、外食が困難になることもあります。突然の外食や人との食事で、メニュー選びに悩むこともあるでしょう。

さらに、ビタミンや鉄分といった栄養素の摂取にも注意が必要です。小麦製品はビタミンB群や鉄分を豊富に含んでいるため、これらを摂れなくなると栄養が偏るリスクがあります。

グルテンフリーに挑戦することで体と向き合い、食事の質を改善するきっかけとなるかもしれません。高栄養価の食事を選択するようになると、健康的な生活につながるのです。ただ、高価な食品を避けるには、自炊が必要になるでしょう。これらのことを理解し、グルテンフリー生活を選択することが大切です。

5:グルテンフリーを始める前に小麦アレルギーかを確認しよう

グルテンフリーを始める前に、自分が小麦アレルギーを持っているか、またはセリアック病の可能性があるかを確認することが重要です。小麦に対するアレルギーや過敏症が無い場合は、食事習慣を無理に変える必要はありません。

小麦アレルギーやセリアック病の症状を持っている可能性があると感じたら、医師に相談しましょう。医師はアレルギーテストを行い、適切な食事法や治療法を提案してくれます。

大切なのは、自分の健康状態に合わせた食事法を選ぶことです。食事習慣の変更は慎重な判断と準備が求められます。自分の身体と健康状態をよく理解し、適切な判断を行うことが求められます。

まとめ

グルテンフリー生活が全ての人にとってベストとは限らないこと、その事実を理解していただくのがこの記事の目的です。

グルテンフリーの生活が必要なのは、特にセリアック病や小麦アレルギーを抱える方。これらの病気は日本人にはあまり見られないので、全ての日本人がグルテンフリー生活をする必要はありません。グルテンを抜くことで体調が向上すると感じる人もいるので、あくまで個々の体質やライフスタイルによって異なります。

グルテンフリーは健康な生活を選ぶ一つの選択肢であり、全ての人に適しているわけではありません。その理解があって初めて、自分自身の体質や生活スタイルに、グルテンフリーが適しているかどうかを自分で判断することができるでしょう。