小麦、ライ麦、大麦などに含まれる、タンパク質の一種である「グルテン」を控える食事法のことを「グルテンフリー」と言います。欧米諸国では、グルテンに対する遺伝性の不耐症であるセリアック病の治療食として、グルテンフリーが取り入れられています。ところが、日本人にとってグルテンフリーは意味がないのでは?という疑問点もあるようです。
本記事では、グルテンフリーの日本人への有効性について詳しく解説します。
目次
グルテンフリーは日本人には意味がないの?
グルテンは、パンやパスタなど、小麦粉を主成分とする食品の食感や風味、形状を維持する役割があります。しかし、一部の人はグルテンを摂取すると、下痢、腹痛、頭痛、体のだるさ、不安、気分の落ち込みなどの症状が現れ、体調や気分を悪くしてしまいます。セアリック病もこの1つです。
しかし、セリアック病は日本人の患者数も少なく、また小麦アレルギーの場合は小麦を除去することが必然であることから、「グルテンフリーは日本人には意味がない」といわれることがあります。
日本人の小麦アレルギーの割合
2020年に消費者庁によって実施された調査では、報告された食物アレルギーの原因食物の割合として小麦アレルギーは、鶏卵・牛乳・木の実類に続く4位というデータが明らかになっています。また、年齢別の小麦の原因物質の割合は0歳で10.8%、1~2歳で5.8%と成長とともに下がっていきますが18歳以上では19.7%と全ての食材の中で1番多い割合となっており、成人してから小麦アレルギーを発症される方が多いことが分かりました。日本人の有病割合としては、小児で0.07~0.7%、小中高生で0.04~0.5%、成人では約0.2%と推定されています。
参考:消費者庁
日本人のセリアック病の割合
セリアック病とは欧米に多くみられる疾患で、グルテンに対する遺伝性の不耐症です。主な症状には慢性下痢や、腹痛などがありさまざまな臓器系に影響を与える可能性があります。日本人の有病率は、約0.05%と患者数が少ない疾患です。
参考:MedicaiNote
日本人の食生活とグルテンフリーダイエット
セリアック病の罹患率が少ない日本人は、グルテンフリーの意味がないのでは?との声もあがっていますが日本人とグルテンの関係はどのようなものなのでしょうか。以下では、日本人の食事とグルテンフリーダイエットの有効性についてご紹介します。
日本人の食生活の傾向
日本人は米を主食とする和食を中心とした食生活をおくってきましたが、現在は食の欧米化が進み、米の消費が減少しパンの消費が増加しています。2011年に行われた総務省の『家計調査』では日本の一般家庭におけるパンの消費が米の消費を上回りました。また、肉類や乳製品の摂取量が増加し、加工食品やファーストフードの利用の割合も高くなっています。
日本人のグルテンフリーダイエットの有効性
グルテンフリーはダイエットの分野でも注目されています。これは、小麦製品は高カロリーの食べ物が多いため控えることで摂取カロリーを抑えられること、腹持ちが良く消化がスムーズに行われないため、代謝が落ちやすい傾向にあることから、グルテンフリーを行えば代謝が高まり消費カロリーが増えることなどが関与しています。このことからダイエットの有効性はありますが科学的な根拠は判明していません。
まとめ
グルテンフリーは、小麦アレルギーやセアリック病の方が、間違えてグルテンを含んだ食品を食べないようにと、食事療法として取り入れられたことがはじまりです。
ですので、全ての日本人がグルテンフリー生活をする必要はありません。日本人にとってグルテンフリーが意味がないということではなく、小麦アレルギーやセアリック病の方にグルテンフリーは意味があるのです。しかし、グルテンを抜くことで体調が向上すると感じる人もいるので、あくまで個々の体質やライフスタイルによって異なります。
グルテンフリーは健康な生活を選ぶ一つの選択肢であり、その理解があって初めて、自分自身の体質や生活スタイルに、グルテンフリーが適しているかどうかを判断することができるでしょう。
管理栄養士 上田 光世
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