グルテンフリーは、グルテンを含まない食生活を指す言葉ですが、特に体質や健康状態に対する効果が注目されています。グルテンフリーとは何か、どのようなメリットとデメリットがあるのかをご存知ですか?このコラムでは、グルテンフリーを始める前に知っておきたいデメリットについて、具体的な情報を紹介します。
注意:グルテンフリーは特定の疾患や体質により必須の食事療法となる場合があります。自己判断で始める前に、必ず医療機関や専門家に相談しましょう。ここで提供する情報は一般的な内容であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
目次
グルテンフリーのデメリット
グルテンを含まない食事スタイル、いわゆるグルテンフリーは健康志向の方を中心に広く取り入れられています。とくに、グルテンに対する遺伝性の不耐症であるセリアック病の方にとっては必須の食事スタイルとなります。しかし、グルテンフリーにはデメリットもあります。グルテンフリーを取り入れようと検討している場合は、まずそのデメリットについても知ることが必要です。以下ではグルテンフリーがもたらすデメリットについてご紹介します。
栄養バランスが偏ることがある
グルテンフリーの生活を始めるひとつめのデメリットとして、栄養バランスが偏ることがあります。
グルテンとは、小麦、ライ麦などの穀物系食品に含まれるタンパク質の一種ですが、これらの穀物を排除すると、身体にとって重要な栄養素が偏り、不足することがあります。グルテン含有食品は、ビタミンB群や食物繊維、ミネラルなど多くの栄養素を含んでいるため、グルテンフリーを行うことでこれらの栄養素が不足しがちになります。
とくに注目したいのは、ビタミンB1の不足です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える働きをもっているため、不足すると体調不良につながることがあります。例えば、疲れや食欲不振、ふらつきなどといった症状が生じます。
さらに、食物繊維が不足すると、便秘や高血圧などのリスクが高まるというデメリットもあります。食物繊維は、腸内環境を良好に保つとともに、血圧や血糖値、コレステロールの調整にも一役買っている重要な栄養素です。
しかし、栄養バランスが偏るというデメリットは、グルテンフリー食品だけを偏食することによって生じる問題であるため、豆類、果物、野菜など、グルテンを含まない食品もバランスよく栄養を摂取することで、これを補うことが可能です。
そのため、グルテンフリーを始める方は、穀物を排除してもバランスよい食事ができるように、さまざまな食品を組み合わせる食事メニューづくりに工夫が必要です。一方で、食事で必要な栄養が十分に摂れない場合は、サプリメントなどで補う方法もあります。
参考:一般社団法人製粉振興会
糖質が少なくなる
グルテンフリーの食生活は、糖質が少なくなるというデメリットがあります。グルテンは主にパン、パスタなどの小麦製品に含まれる成分で、これらの食品は私たちの主要な糖質源のひとつです。糖質は私たちの身体にとって重要なエネルギー源であり、なかでも糖質が消化吸収を経てなるブドウ糖は脳が活動するうえで唯一のエネルギー源であり生命活動には欠かせない物質です。元気で活動的な生活を送るためには、糖質の摂取は避けられません。
グルテンフリーの食生活に取り組むと、糖質を摂るための選択肢が少なくなってしまいます。パンやパスタ、そばやうどんなど小麦をベースとした製品からは避ける必要があり、どうしても食事全体の糖質が少なくなり、エネルギー不足となることもあります。
これはデメリットともいえますが、利点ともいえる面もあります。食事からの糖質の取りすぎは体重増加の原因となるため、糖質の取りすぎを抑えるという観点からは、この側面はむしろメリットともいえます。その一方で、適度な糖質摂取ができないと身体の機能が正常に働かないことも覚えておきましょう。
グルテンフリーの食生活を送る方は、ほかの食品から適量の糖質を摂取することが重要になります。たとえば、米やジャガイモ、フルーツなどから糖質を補えます。これらの食品を適度に摂り入れることで、健康的な糖質摂取を維持しましょう。
糖質が少なくなるグルテンフリーの食生活のデメリットを理解し、適切な対策をとることで、健康的な生活を送ることが可能です。グルテンフリーダイエットを考える際は、体調や体質などを考慮し、必要であれば専門家の意見を求めるようにしましょう。
参考:日精製粉グループ
グルテンフリー食品には食品添加物が多く含まれている可能性がある
グルテンフリーと聞くと、自然な食品という印象を受けるかもしれませんが、注意が必要なのはグルテンフリー食品には、味や食感を補うために、食品添加物が多く含まれている可能性がある点です。
体調を考えると、食品添加物を摂取することは避けたいところですが、すべて自然に含まれるものや身体に影響が少ないものもありますので、すべての食品添加物が一概に悪いとは言えません。
ただ、グルテンフリー食品に含まれる食品添加物がどの程度の量なのか、また何が含まれているのか、をしっかりとチェックすることは大切です。「グルテンフリー」というだけでなく、製品の裏に記載されている成分表を見て、どのような添加物が含まれているのかを確認しましょう。
外食がむずかしい
グルテンフリーのライフスタイルを送る上でのデメリットのひとつとして、「外食がむずかしい」という点が挙げられます。
グルテンは一般的にパンやパスタなどの小麦粉に含まれるタンパク質で、外食ではこれらの食材を含む食事が一般的です。また、注文した料理にグルテンは含まれていなくても調理器具や作業台が同じで混入してしまう可能性があるということも否定できません。
これにより、アレルギーをもつ人にとっては外食することはリスクがあるといえます。
そのため、外食する際には事前にレストランやカフェでグルテンフリーのメニューの有無を確認する対策が必要になります。
一方、健康への意識が高まることで各レストランやカフェでもグルテンフリーメニューが増えている傾向があります。常に新しいグルテンフリーメニューへのアップデートをチェックすることで外食を楽しむことも可能です。
しかし、外食よりも自宅での食事が主となることが多いでしょう。そのため、グルテンフリー食を楽しむために新たなレシピを探すことも楽しみのひとつとなります。
日本ではまだグルテンフリー商品が少ない
グルテンフリーを始める上で重要なのが食品選びです。しかし、日本ではまだグルテンフリーの商品が少ないのが現状です。とくに、外食やスーパーマーケットでの食品選びは困難を伴うことが多いでしょう。
まず、グルテンフリーと表示されている商品自体が少ないことが問題です。これは、日本の食品表示法では、グルテンフリーの表示に対する規制がまだ厳しくないためです。その結果、多くの商品でグルテンの含有状況が明示されていません。
わかりやすく表示されているグルテンフリー商品でさえ、価格が高い傾向にあります。これは、まだ需要が少なく、生産コストが高いためです。そのため、気軽に始められないというデメリットがあります。
多くの日本の伝統的な食品は、グルテンを含む小麦やそばなどでつくられています。たとえば、日本の朝食の定番であるパンやうどん、そば、ラーメンなどは通常、グルテンを含んでいます。さらに、日本の料理には天ぷらやかき揚げなど小麦粉を使ったものが多く、これらの選択が難しくなります。
対策としては、自炊を中心にすることが有効です。自炊することで、自分で食材を選び、料理のつくり方をコントロールすることができます。これにより、グルテンフリー食を摂り入れやすくなります。
見分けるのが難しい
グルテンを含まない食品を選ぶことは一見簡単そうですが、実際は見分けるのがなかなか難しいです。なぜなら、食品の成分表を見ても、一部の食品はグルテン含有をはっきりと表示していないからです。以下では、グルテンフリー食品を見分ける際のポイントを紹介します。
まず、食品の成分表を見る際には、小麦やライ麦といったグルテンを含む穀物がリストされていないか確認します。これらの食品が含まれていれば、その商品はグルテンフリーではありません。これだけではなく、ソースや調味料、肉や魚の加工品にもグルテンが含まれている可能性があります。たとえば、タレや調味料、ソース類は小麦粉を成分に含んでいる可能性があるため注意が必要です。
次に、商品のパッケージに表示されているグルテンフリーマークを見ることも大切です。グルテンフリーマークが表示されている食品は、グルテンを含んでいないか、非常に微量のグルテンを含んでいることを示しています。ただし、マークがないからといって、必ずしもグルテンを含んでいるわけではありません。食材本来の特性上、グルテンを含むことがない食品も存在します。
グルテンフリー食品を見分けるには、食品の成分表示を注意深く見ること、グルテンフリーマークの有無を確認することが必要になります。毎日の食事づくりの中で、これらのポイントを心がけることで、グルテンフリーの食生活を快適に楽しむことができるでしょう。
満足いく味のものがない可能性がある
グルテンフリーの食事を始めることで心配されることのひとつが、味の問題ではないでしょうか。グルテンを含む食品と同じ味わいを求めても、なかなか満足できる味に出会えないということがあります。
グルテンという成分自体は無味無臭ですが、パン、パスタ、うどんなどのもっちりとした食感や、パンの香ばしさを出す役割を果たしています。そのため、グルテンフリーの食材では、これらの食感や味わいを再現するのが難しいです。
たとえば、グルテンフリーのパンは、もちもちとした食感が得られず、ドライでパサパサした食感になることがあります。また、グルテンを含むパスタと比べて、グルテンフリーのパスタは茹でてもホールド感がなく、モソモソとした食感になることがあります。
グルテンフリーのライフスタイルを送る上で大切なのは、グルテンを含む食品と同じ味を追求しすぎず、グルテンフリー食材ならではの味わいを受け入れることです。
まとめ
グルテンフリーは栄養バランスの偏りや糖質の減少、食品添加物の多さや、期待される効果が出ない可能性、外食の困難さ、国内での製品の少なさ、見分ける難しさ、満足感の不足等、様々なデメリットがあることをご理解いただけたと思います。
しかし、これらはグルテンフリーに限らず、どの食事法にも言えることであり、一律に否定することはできません。
自己の体調やライフスタイルに照らし合わせて、グルテンフリーが自分に適しているかどうかを検討し、必要に応じて専門家の意見を仰ぐことが大切です。
管理栄養士 上田 光世
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